この記事でわかること
社会は「新型コロナウィルス(COVID-19)」の猛威にさらされ、私たちの「働き方」も大きく変わってきました。「コロナ禍の働き方」という点で最初に挙がるのは「職場での作業から自宅での作業(いわゆるリモートワーク)」に変わった点ではないでしょうか?
#もちろん企業の考え方や仕事の性質上、職場への出勤を継続されている方もいらっしゃいます。
リモートワークの増加に伴い、PC上でのルーティンワーク(*1)をロボットに代替する「RPAの活用」が再注目されています。
*1:週に1回または毎日といった定期的な作業。
本記事では、「リモートワークでのRPA活用」の際の留意すべきポイントをご紹介いたします。
目次
1.留意すべきポイント
2.機器の管理方法
3.外部環境への接続方法
4.運用方法
5.まとめ
1.留意すべきポイント
リモートワークでRPAを活用する際は、「オフィス内でのRPA活用」とは異なる留意ポイントがあります。
オフィスというセキュリティがある程度担保された空間と異なり、リモートワークの基本的な作業場所となる自宅の場合、作業場所の物理的な環境やネットワーク環境などいくつかの点で個々人に差異があります。
本記事では、私どもが考える「リモートワークでRPAを活用するために留意すべきポイント」として下記3点を挙げます。
- 機器の管理方法
- 外部環境への接続方法
- 運用方法
上記の留意ポイントについて以降でのそれぞれについて解説していきます。
2.機器の管理方法
リモートワークでRPAを活用する際に、最初に留意しておくポイントが、RPAをインストールした端末を「どのように管理すべきか?」です。
リモートワークでは、基本的に自宅が作業場所となります。
その際、個々人の作業場所が異なるため、オフィスの様に物理的に統一された環境(例:鍵付きロッカーがあるなど)と同等のものを用意することは困難です。
しかし、何らかのルールを作成し、そのルールに基づいて機器の管理を行うことは重要です。
以下に自宅端末の管理ポイントを記載します。
ウィルス感染防止
プライベート端末の利用は基本的にNGです。
フリーアプリのインストールや怪しいサイトへのアクセスによりウィルスの感染等で情報漏洩を引き起こす可能性があるためです。
また、会社から貸与された端末でも、アンチウィルスソフトの導入などでセキュリティが担保された端末である必要があります。
機器の盗難防止
機器を保管する際にも注意が必要です。
機器の盗難やデータの不正取得を防ぐため、施錠できるロッカーでの保管や少なくともセキュリティケーブルを使った盗難防止対策が必要です。
データ漏洩防止
RPAを実行する際、他人にRPAの処理過程を見られる場合があります。
そこで、継続的に電源を確保でき、且つ物理的に画面が見えない鍵付きロッカーでの保管をお薦めします。
リモートワークでのRPA活用時、「自宅だから大丈夫」ではなく、端末自体の盗難防止やデータ流出などにも気を配ることが必要です。
また、自宅端末とRPA実行端末(*2)が異なる場合、RPA実行端末においても上述の管理ポイントに留意する必要があります。
*2:自宅端末とは会社から貸与された作業端末。RPA実行端末とは作業端末とは別に用意されたRPA用端末の事です。
3.外部環境への接続方法
自宅端末とRPA実行端末が異なる場合、自宅端末からRPA実行端末への接続が必要となります。
その際、リモートデスクトップ接続ツールを利用する事になります。
代表的なリモートデスクトップ接続ツールとして「Windowsリモートデスクトップ」があります。
Windowsリモートデスクトップは、Windows系のOSにプリインストールされており、Microsoft社が提供しているツールのため、安心して利用できるツールです。
しかし、RPAを実行する際は注意する点があります。
たとえば、条件分岐や繰返し処理などの条件判定を行うのに画像認識を利用して自動化を行っているRPAを実行した場合、実行途中でWindowsリモートデスクトップ接続を切断すると、セッションが切れ画面がロックされる為、画像認識が正しく行えず、RPAの処理が正常に終了できなくなります。
このような事態を避けるには、リモートデスクトップ接続を切断しても「RPAが動作し続ける事ができるリモートデスクトップツール」を選択する必要があります。
参考情報として代表的なリモートデスクトップツールを以下に記載いたします。
ツール名 | 価格 | サポート/マニュアル | 特徴 |
---|---|---|---|
UltraVNC | 無料 | なし | セットアップが容易。プラットフォームはWindows系のみ。 Windowsログイン認証、AES暗号化に対応。 |
TeamViewer | 有料 | あり (マニュアル) | セットアップが容易。複数のデバイス、プラットフォームに対応。 AES暗号化、2 要素認証に対応。ISO27001などの認証を取得。 |
splashtop | 有料 | あり (マニュアル) | 複数のデバイス、プラットフォームに対応。SSL/TLS、AES暗号化に対応。 2段階認証、デバイス認証に対応。 |
4.運用方法
リモートワークでは、社員が常に同じフロアに集まって仕事を行っている訳ではなく、各人が自宅という個々人が分断されている状態で仕事を行います。
このため、「オフィスでのRPAを活用した仕事の仕方/ルール」とは異なる、「リモートワークでのRPAを活用した仕事の仕方/ルール」が必要となります。
例えば、受注業務において以下の作業フローがあるとします。
RPA導入前オフィス内業務フロー
手作業でのオフィス内受注業務は、以下の様な業務フローとなります。

RPA導入後オフィス内業務フロー
前述の業務フローにRPAを導入した場合、以下の様な業務フローとなります。

RPA導入後リモートワーク業務フロー
前述の業務フローをリモートワークで行う場合、(いくつかのやり方/フローが考えられますが)以下の様な業務フローとなります。

この場合、リモートワークでは毎日オフィスに出勤できないため、「発注書FAX受信→OCRでデータ化→データファイルをファイルサーバーに配置」処理を“週に一度まとめて処理する”といったフローを検討できるかもしれません。
また、「発注書FAX受信→OCRでデータ化→データファイルをファイルサーバーに配置」処理の担当者と異なる担当者が「データファイルのチェック→[データファイルを受注システムへ登録]」処理を行う場合、リモートワークでは連携フロー(連絡方法や連絡タイミングなど)の検討が必要です。
その際に、Input(システム・ファイル・データ等)とOutput(作成されるファイル・システムへの入力)の情報とそれがどこに保存されているのかなども明確します。また、どの端末を、誰が、いつ利用するのか、も明確にします。
フローチャートなどを作成する事で、リモートワークでのRPA活用時の検討事項の洗い出しや関係者各所への連携共有も容易になると思います。
5.まとめ
今回の記事で記載しました”留意ポイント”は、どれも基本的な事であり、リモートワークでRPA活用を行う際に気を付けるべきポイントだと考えています。
この記事が今後の皆様の「リモートワークでのRPA活用」とともに「働き方改革」の一助になればと考えております。