本記事は、ITが私たちの安心・安全な生活にどれだけ役に立つかを記します。

目次

  • 新型コロナウイルスの感染拡大
  • DXとは
  • DX事例-DXで新型コロナウイルス封じ込めに成功した台湾
  • 「電子フェンスシステム」-電波で位置情報を特定することで隔離を確実に実施
  • 「医療情報クラウドシステム活用」-保険証で高リスクの病人を把握
  • 「マスク実名制」-誰でも買えるように
  • 「SMS実聯制」-5秒で手続き完了
  • まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大

2021年5月12日時点、新型コロナウィルスの感染者は世界で1.6憶人を超え、300万人以上の方がご逝去されました。感染リスクを抑えるために、在宅勤務が日常となり、業務上のコミュニケーションも対面ではなく、オンラインでやり取りすることが多くなりつつあります。世界中で国境封鎖やロックダウンなどが行われ、日本では緊急事態宣言が発令され、色々な防疫対策が取られています。それに伴い、経済に大きな影響を与えて、2020年のGDP成長率は多くの国でマイナスとなりました。
その中でDXの重要性が注目されています。今回はコロナ禍の中でDXが防疫においてどんなことに役に立ったことを調べてみたので紹介したいと思います。

DXとは

DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略であり、スウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念です。さまざまな定義があるものの、現在ではおおむね、「データとデジタル技術を活用し、私たちの暮らしを変革するとともに、ビジネスで競争上の優位性を確立すること」と定義されると思います。

IT化と似ているように思われますが、DXのポイントは新しい価値を生み出して“競争優位性を確立すること”だと思います。単にIT化を目的として様々なソフトウェアを導入するだけではなく、優位性を確立するために、デジタル技術を手段としてビジネス自体を変革していくことが求められていると考えます。

DXで新型コロナウイルス封じ込めに成功した台湾

新型コロナウィルスは中国の湖北省武漢で最初に確認されました。台湾は中国に近いので、すぐにも感染拡大する恐れがありました。ところが、台湾では2021年5月12日時点で感染者は1200人程度、そのうち約8割が海外から入国する際に発見された人であり、市中感染がほぼゼロ。人口100万人当たりの感染者数は世界的にみても少なくとどめています。SARSの経験からの迅速な対応がその要因ですが、今回はデジタル技術、ITを活用した対策をとったことも大きなパワーになったと言われています。ちょうどこの記事を書いているさなかに、台湾は人為的なミスにより感染が急増していますが、それに伴い新しい活用事例も出ていますので、併せて紹介したいと思います。

「電子フェンスシステム」電波で位置情報を特定することで隔離を確実に実施

2020年に国内感染者がほぼいなかった台湾では、海外から入り込むウィルスが最大の敵と想定されました。新型コロナウィルスの侵入を防止するために、2020年2月から入国する際に記入する資料の正確性を高めています。その入国プロセスの効率を上げるために、手続きを電子化で管理する「入境検疫システム」や、自主隔離の人と自主健康管理の人の情報を管理する「防疫追跡システム」、携帯の位置情報を追跡する「電子フェンスシステム」などが開発されて、隔離が確実に実施されます。決めた隔離場所から勝手に離れる場合には、システムから警告メッセージが警察に送信されます。連絡が取れない場合には、警察が訪れて、確実に隔離していることを確認します。万が一、隔離されるべき人がルールを違反して出かけた場合には、最大100万台湾元(おおよそ380万円)の罰金が課されます。また、2020年12月から「電子フェンス2.0」が始まり、大型イベントの参加者情報を防疫システムに参照し、携帯の電波で位置を追跡することによって、自主健康管理者が大型イベントに参加する場合にはシステムが検知して、警告メッセージを警察に送るシステムができあがっています。

「医療情報クラウドシステム活用」保険証で高リスクの病人を把握

台湾には薬手帳がありません。なぜかというと、すべての薬と医療情報は保険証により、医療情報クラウドシステムに記録されるからです。そのシステムに、新型コロナウイルス感染防止対策として、新しい機能が追加されました。
海外から入国して14日間以内に該当する自主隔離の人、感染者の濃厚接触者、15日間から21日間までに該当する自主健康管理の人、パイロットとキャビンクルーなど、感染リスクが高い人が通院する際に、海外渡航履歴と接触履歴が、リスクレベルによって背景色が変わったメッセージで表示されます。これによって海外渡航履歴の隠蔽が不可能となり、医療関係者を守れますし、医師は患者の状況を正確に把握し、より適切に診断することが可能になります。

自主隔離者の場合には赤く表示されます。

自主健康管理者は黄色で表示されます。

海外から入国して21日間超えた場合には緑色で表示されます。

「マスク実名制」-誰でも買えるように

サージカルマスクは感染を予防する手段として欠かせないものです。そのため、2020年1月感染が拡大したとき、マスクを買い占めて高い値段で転売する人も現れました。どの店にもいつも売り切れとなり、手に入れることが難しい状態でした。台湾では2020年2月6日に誰でもマスクを買えるようにするために、IT担当閣僚唐鳳(オードリー・タン)がエンジニアたちと協力してマスク実名制システムを開発し、運用が始まりました。そのあとにも改良が続いていますが、概要は下記となります。
「マスク実名制1.0」は、ドラッグストアでのマスク購入において保険証を使った本人確認を実施します。
「マスク実名制2.0」は、サイトから予約してコンビニで買うことができます。
「マスク実名制3.0」は、予約なしで直接コンビニで買うことができますし、ついでに次回の分を予約することもできます。マスクを購入する必要がない場合には、自分の分のマスクを海外に寄付する機能も追加されました。

また、どの店は売り切れで、どの店にまだ在庫があるかという情報を、国民が把握できるように、各店舗の在庫情報を使って、マスクマップが開発されました。事前にマスクマップで在庫を調べておけば、色々な店を回ることなく、調べればすぐにマスクを手に入れることができます。

「SMS実聯制」-5秒で手続き完了

2021年5月に、台湾はパイロットにより感染拡大が続いています。政府は、感染者と同じ場所にいた接触者を把握して、感染が拡大することを防止するために、レストランや店やバスや電車などを利用する際に、客は必ず電話番号を残すような制度(実聯制)が導入されました。ただ手書きには時間がかかりますし、個人情報が適切に扱われないリスクと他人との接触が増える恐れがあります。
そこで、IT担当閣僚の唐鳳(オードリー・タン)は通信会社と協力して3日間で「SMS実聯制」というツールを作りました。スマートフォンの場合、QRコードをスキャンすれば、店番号と宛先が自動的に設定され、送信ボタン押すだけで5秒以内に、利用・入店などの手続きを完了できます。しかも、接触なし、アプリ不要、手入力必要がなく、個人情報不要で、無料なツールです。また、スマートフォンではない携帯(フィーチャーフォン)でも、宛先1922と店番号を入力して送信すれば完了です。
このような形で簡単に利用・入店などの手続きができるようになったことで、国民が積極的に協力する意思の向上につながりました。

まとめ

世界中の多くの国で、コロナ感染拡大が発生し、ロックダウンして外出を制限する中で、台湾では2020年2月から電子フェンスシステムと医療情報クラウドシステムを活用して、海外から入り込む新型コロナウィルスを封じ込めました。これによって、2020年では200日間超えて市中感染が発生していませんでした。

効果的にデジタル技術、ITを活用した結果、2020年の台湾はGDP成長率が3.11%になり、国民はコロナがない世界を生きることができました。残念ながら2021年5月に人為的なミスにより、感染拡大となっていますが、マスク実名制で防疫に必要なサージカルマスクを誰でも買えますようにして、SMS実聯制で感染者の接触者を特定してさらなる感染拡大を防止しています。

人の力には限界があり、自主隔離の方がちゃんと隔離生活をしているかどうか、警察が24時間に監視するわけにはいけません。感染した方がこれまでどこで誰と接触したのかを調査したとしても、協力の意志がなければ防疫対策には漏れが発生します。そんな時にITを活用できれば人の負担を減らせますし、より効率にいい成果を出せます。

また、ITを活用する以外には、スピードがとても重要です。2020年1月下旬に台湾ではサージカルマスクが品切れになる状態が続きましたが、2020年2月6日からマスク実名制が始まりました。また、簡単なツールではありますが、SMS実聯制は3日間で作られ、実効を上げることができました。

当社の行動規範(デリバリーフィロソフィー)は、「Pro-Active(積極的なアクションを)」、「Think Logical(何事も理屈で考える)」、「Talk Straight(間違いを恐れず、発言する」です。

目的は効率的に価値を社会に生み出すことです。今度紹介したDX事例は図らずとも当社の社訓にも通じるIT活用事例だと思い、今回紹介させていただきました。

今後も、先端技術が次々と登場し、ITが様々な場面で活用され、デジタルの世界がさらに広がっていくと思います。企業はDXというキーワードを強く意識してビジネスを進めていくことが求められ、世界全体でDXがさらに加速すると思います。
今後も進むDXにより生活がどのように変わっていくのか、どのような価値を生み出すのか、視野を広く深くして感知していきたいと思います。