この記事は以下のような方向けです
・ 自社内でのデジタル変革(DX)を推進したい
・クラウド活用を進めたい
・ DXやクラウドという言葉は耳にするけれど、どのように活用するものかを知りたい


目次
  • デジタル変革(DX)とは?
  • 「IT化」と「DX」の関係
  • DX実現のメリット
  • クラウドの特徴
  • まとめ:クラウド活用によるDX実現

デジタル変革(DX)とは?

日々の生活やビジネスなど様々なシーンでデジタル化が進んでいます。
昨今はデジタル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にする機会も増えているのではないでしょうか。
デジタル変革(DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良くさせる」という考え方です。

ウィキペディア(Wikipedia)では

デジタルトランスフォーメーション(英: Digital transformation; DT or DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念である。デジタルシフトも同様の意味である。 2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱したとされる。

引用:ウィキペディア(Wikipedia). <デジタルトランスフォーメーション>. https://ja.wikipedia.org/wiki/デジタルトランスフォーメーション

と記されています。さらに現代においては、内容がより具体化されてきています。

経済産業省が2019年に発表した

 「DX 推進指標」とそのガイダンス では

<DX を巡る現状>
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルを展開する新規参入者が登場し、ゲームチェンジが起きつつある。こうした中で、各企業は、競争力維持・強化のために、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことが求められている。

とされ、DXの推進は国の発展のための重要項目と位置づけられています。
この資料内の「5.3 IT システム構築の枠組み(定性指標)」において、

「ビジョン実現(価値の創出)のためには、既存の IT システムにどのような見直しが必要であるかを認識し、対応策が講じられているか。」

という《ビジョン実現の基盤としての IT システムの構築》をキークエスチョンと設定し、その課題として以下のように記しています。

✔ DXを進める基盤として、ITシステムに求められるものは、以下の3つ。
  ① データをリアルタイム等使いたい形で使えるか
  ② 変化に迅速に対応できるデリバリースピードを実現できるか
  ③ データを、部門を超えて全社最適で活用できるか
✔ しかしながら、多くの日本企業では、部門ごとに個別最適でシステム
  を構築し、しかも過剰なカスタマイズにより、IT システムがブラック
  ボックス化してしまっている。これを解消できないと、
  ① 全社最適でデータを使えず、変化へのスピーディーな対応もでき
    ずに、DXを実現できず、デジタル競争の敗者に。
  ② 維持管理費が高額化し、IT 予算の9割以上となり(技術的負債の
    肥大化)、価値創出につながる投資に資金・人材を振り向けられ
    ない。
  ③ 保守運用の担い手がいなくなり、トラブルやデータ滅失等の
    リスク大。
✔ しかしながら、ITシステムの話になると、経営者は IT部門に対して
  「ちゃんとやっておいてね」で終わってしまうケースが多い。

引用:経済産業省. <「DX 推進指標」とそのガイダンス>. 令和元年 7月, 2019. https://www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf

もちろん、DX実現においてはこれがすべてではありません。
経済産業省のガイダンスのキークエスチョンに他にも、ビジョンの共有、経営トップのコミットメント、ガバナンス・体制などの諸問題も挙げられるかと思います。
DX推進は、経営と事業部門、IT部門がこうした認識を共有し、議論を進めていくべき経営課題といえます。

私はIT事業者として、経営、事業と連携し、課題解決を行う時には、以下の3点を考慮することが重要だと考えます。

導入スピード
コストを抑えた導入
変化に合わせた柔軟性

現在、この3点の実現にはクラウド化が欠かせなくなってきています。
そこで本稿はDXにおけるクラウド化をテーマとします。

その前提として、IT化とDXについての認識を確認します。


「IT化」と「DX」の関係


ITとは情報技術のことです。IT化はアナログで行っていた業務などをデジタル技術の利用に置き換えることです。

デジタル技術によって同じ作業の時間を格段に短縮したり、無駄な作業をなくして、作業の効率化が図ることがIT化です。

DXはITを活用して競争力維持・強化のためビジネスモデルや組織を変革することを意味し、その目的は「企業の競争優位性を確立すること」となります。
DXを推進する上で、IT化が重要な「手段」であると考えると分かりやすいと思います。


DXのメリット

DXには次のようなメリットがあげられます。

  • 効率性・生産性・精度の向上
  • ビジネス市場の変化に対応
  • レガシーシステムからのリスク回避
  • BCP(事業継続計画)の充実につながる

効率性・生産性・精度の向上
業務体系の見直しを図り、優先度や重要度の高いタスクに集中し、業務効率化を行うことにITを活用します。
IT化によって人的ミスの抑止につながることもメリットといえます。

ビジネス市場の変化に対応
市場では日々状況が変わり、社会変化への対応も必須です。
新たなプレーヤーの参入も珍しくありません。
変化の速い市場状況に対応し、DXによって得た情報を活用し、新たなビジネスを生み出すことも可能です。

レガシーシステムによるリスク回避
レガシーシステムの運用継続によってシステムがより複雑化し古い技術を扱える人材の減少によりシステムがブラックボックス化する懸念が浮上しています。
DX推進によって時代に即したテクノロジーを活用し、レガシーシステム運用で発生するリスクの回避につなげることができます。

BCP(事業継続計画)の充実につながる
BCPには、リスク発生時の事業の継続や早期回復を可能にすることが求められます。
たとえば、今回のコロナ禍によるテレワーク促進のような場合です。
DXは業務の効率化や新しいビジネスを生み出すため、BCPに威力を発揮します。

次に「クラウド化」に目を向けます。


クラウドの特徴

クラウドとはサーバー、データベース、ストレージ、アプリケーションなどのITリソースをインターネットなどのネットワークを通じて利用する形態です。
ハードウェアの購入をしたり、ソフトウェアのインストールしなくても利用できるサービスです。クラウドサービスの利用形態によって次のようなタイプがあります。

SaaS (Software as a Service):ソフトウェアを提供
代表的なサービスには Gmail、Office365、Zoom などがあります。

PaaS (Platform as a Service):プラットフォーム(開発環境)を提供
代表的なサービスには AWS Elastic Beanstalk、Azure App Service、Google App Engine などがあります。

IaaS (Infrastructure as a Service):インフラ(サーバーなど)を提供
代表的なサービスには Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)、Azure 仮想マシン (VM)、Google Compute Engine などがあります。

これらサービスの提供する領域は以下となります。

このようにXaaSと略して表現されるクラウドサービスは、近年において他にも多くなってきています。

例えば、
AaaS (Analytics as a Service)
BaaS (Backend as a service)
DaaS (Desktop as a Service)
DBaaS (Database as a Service)
FaaS (Function as a Service)
GaaS (Gaming as a Service)
HaaS (Hardware as a service)
MaaS (Mobility as a Service)
NaaS (Network as a Service)
と表現されるクラウドサービスがあり、それ以外や今後も「aaS」と組み合わせて表現されるサービススタイルも増えていくことでしょう。
これらすべてを既知のものとする必要はないと思いますが、従来よりのSaaS、PaaS、IaaSを中心に適用できるサービスを見出していくことが重要となります。

クラウドサービスのプロバイダーとしては、2020年の Gartner Magic Quadrant for Cloud Infrastructure and Platform Services において、リーダーにAmazon Web Services (AWS)、Microsoft、Googleが認定されています。

引用:Gartner Magic Quadrant for Cloud Infrastructure and Platform Services. Published: 01 September 2020. ID: G00441742. https://www.gartner.com/en/documents/3989743/magic-quadrant-for-cloud-infrastructure-and-platform-ser

引用:Figure 1. Gartner Magic Quadrant for Cloud Infrastructure and Platform Services.
https://pages.awscloud.com/gartner-cloud-infrastructure-platform-services-magic-quadrant.html

クラウドサービスの特徴として、
・さまざまなデバイスから利用可能であり、リソースの共有やシステムの拡張や縮小を即座に行える
・利用スタイルは、サブスクリプション型や、サービスの利用量よる従量課金などがある
 といったことが挙げられます。
これにより、これまでの物理的なハードウエアで構成するオンプレミスでは成し得なかった必要なサービス、リソースの変化に柔軟、かつ迅速に対応できるようになりました。


DXにおけるクラウド活用のメリット

導入スピードが速い
クラウドはオンプレミスに比べ、サーバーの構築やシステムの準備が軽減されるため、利用できるようになるまでのリードタイムが短い。
競争優位のために素早いサービス開始や市場参入、業務改革ではタイムリーなスタートが求められるDXに向いている。

コストを抑えて導入しやすい
利用した分だけ費用を支払えばよいというスタイルが多く必要最小限のコストで利用可能。変革の効果を確認しながら、改善、統廃合などの判断をすることができる。

変化に合わせて柔軟に変更できる
環境の変化により、インフラのスペックにもスピーディな対応が求めらる。
例えばイベント期間中のみ、サーバーの容量を増やすといったことが柔軟に行える。

クラウドの活用がDX成功へのポイント
組織やシステムが大きくなるほど複数の部門、システム間で連携することが多くなります。実際に、すべてクラウドへ移行する、といった改革はスムーズにいかないことも少なくないと思います。
しかし、必要な時に必要なサービスを適切に選んで利用できるクラウドサービスは、上手に活用すれば、ビジネス、市場の変化へ素早く対応できます。

特に、DXにおいてはシステムなどの拡張性の確保、レガシーシステムからの切り替え、コスト面を含む効率化などの変化に対応することが求められます。
クラウドの活用は導入スピード、コストを抑えた導入、変化に合わせた柔軟性を図るのに適しているといえ、DXに非常に重要な役割を果たすことができると思います。